
2026年夏の展覧会「誕生50周年記念 ノンタン ずっとともだち!!!」展が、7月18日(土)に開幕しました。本展は、絵本作家・キヨノサチコさんの大ベストセラー「ノンタン」シリーズの刊⾏50周年を記念して、来場者のみなさんとともにノンタンをお祝いする展覧会です。
開幕の前日に開催された内覧会には、本展アートディレクションを担当した佐々木俊さん、「ノンタン」シリーズの前担当編集者の千葉美香さん、PLAY!MUSEUMのプロデューサーの草刈大介が登壇。さらに途中、スペシャルゲストも登場し、盛り上がったギャラリートークの様子をお届けします。
取材・執筆:宮崎香菜
会場撮影:池田花梨
会場の入口には、全長2.5メートルの巨大ノンタンがいて、気持ちよさそうにすやすや眠っています。内覧会に出席されたメディアのみなさんも笑顔でノンタンを見守ります。


草刈 みなさん、いかがでしょうか? ノンタン、本当にかわいいですよね。それ以外の言葉が本当に見つからないです。
「ノンタン」シリーズは、3500万部を超える大ベストセラーですが、なぜこんなにも愛され続けているのでしょうか。展覧会を企画するにあたって改めて考えてみたのですが、ノンタンの絵本は、子どもがノンタンと一緒に楽しく過ごすということを第一に描かれているからではないかと思いました。絵本を通して子どもが何かを学ぶことを目的に作られたものではないのです。
ですから、展覧会も、来てくださる方がノンタンと遊んでいるような気持ちになれる場にしたいというところからスタートしました。それで、本展のアートディレクターの佐々木俊さんにまずイメージ作りの段階から相談をさせていただいたんですよね。
佐々木 はい、展覧会作りが立ち上がったのは、1年以上前でしょうか。お話をいただいたときは、時間があるからたっぷりいろんなことができるなと思っていました。でも、結局、会期が近づくと、事務所は「ぱっぱらぱなし」(*)になりました(笑)。
注*『ノンタン ぱっぱら ぱなし』(1986年、偕成社) おかたづけがテーマの絵本で、シリーズの人気絵本のひとつ。本作では、散らかしっぱなしの状態を「ぱっぱらぱらら」と表現しています。

草刈 佐々木さんがデザインしたポスターやチラシはこれまで誰も見たことがないノンタンが表現されており、展覧会制作に携わった人たちをひとつにまとめてくれました。どのようにしてこういうデザインになったか、のちほど展示室の中で詳しくお話を聞かせてください。
展覧会は「ノンタンの夢の中」「ノンタンをお祝いする」「ノンタンと遊ぶ」からなる3部構成です。そして、最後の展示室「ノンタンとママノンタン」では、貴重な原画を展示しており、本日は「ノンタン」シリーズの前担当編集者だった千葉美香さんにお話いただきたいと思います。それでは、会場に入っていきましょう。最初の展示室は「夢の中」をテーマにしているので、ここではよく寝ているノンタンを起こさないであげてくださいね。
夢から覚めたら、みんなでノンタンをお祝いしよう
最初のコーナーは、薄暗い空間でミラーボールに反射する光の粒がきらめく、ノンタンの夢の中をイメージした空間です。よく見ると、たくさんの光の粒の中にはノンタンの形をしたものもあります。夢でも楽しそうなノンタンの寝言を聞きながら進んでいくと、明るくなった場所に、ノンタンたちのふとんが干されています。
草刈 ノンタンが「あ、またおねしょしちゃった」と目を覚ましたところです。ここは絵本『ノンタン おねしょで しょん』をイメージしています。魚の形だったり、ABCの文字だったり、絵本に出てくるおねしょの模様がついたふとんが干されています。

草刈 次は、「ノンタンをお祝いする」というコーナーで、ノンタンのバースデーパーティー会場という設定です。アーティストたちにバースデープレゼントを作っていただきました。一つ目のプレゼントは「大きなあかいじどうしゃ」。ノンタンは「あかいじどうしゃ」が大好きで絵本でも度々登場します。ダンボールアーティストの儀間朝龍さんが、PLAY! PARKで公開制作とワークショップを行い、子どもたちと一緒に完成させた作品です。儀間さんがベースのじどうしゃを作って、そこに子どもたちがノンタンに手紙を書いたり、絵を描いたりしました。そこに、ガムテープを貼っていきますが、色の濃さがさまざまなので、表面に表情が出るのが特徴です。文字や絵も透けて見えて、それがまたいいですよね。
佐々木 ダンボールをコラージュして、ノンタンの絵本を再現した作品も素晴らしいのでぜひ見ていただきたいですね。


草刈 「あかいじどうしゃ」に乗っている「レゴ ®ブロックのノンタン」もいます。レゴ ®認定プロビルダーの三井淳平さんの作品で、実はPLAY! MUSEUMで登場するのは2度目です。1度目は盗まれてしまって……。というのも昨年の夏に開催した展覧会「大どろぼうの家」で大どろぼうの盗品として展示したことがありまして、今回再びの登場となります。

草刈 奥の部屋には、絵本に出てくるノンタンのクッキーをあしらった「特大バースデーケーキ」もありますから、いちごの被り物をかぶって一緒に写真を撮って遊んでみてください。コスチュームクリエイターのイナドメハルヨさんの作品です。ノンタンの赤いギターがデコレーションされている特別なケーキです。


ノンタン登場! ぶらんこ、おうち、たいそうで一緒に遊ぼう
次の展示室は「ノンタンと遊ぶ」コーナー。PLAY! MUSEUMの特色のひとつである大空間でノンタンと思い切り遊ぶことができます。中に入ると、なんとノンタンがぶらんこで遊んでいるではありませんか! 「ノンタン楽しい?」という呼びかけに、足をバタバタさせて応えながらぶらんこを漕ぐノンタンの姿はとてもかわいくて、メディアの方々も、たくさん写真を撮ってくださいました。

草刈 いま、ノンタンが遊んでいるのは、第一作『ノンタン ぶらんこ のせて』に出てくるぶらんこです。実際に誰でも座ることができます。ノンタンがぶらんこの順番を守らず、おともだちに怒られるというストーリーなので、ブランコの周りには、「順番をそろそろ替わってよ」という顔をした、くまさんやうさぎさんもいますね。
それから、奥にある「ノンタンのおうち」でも遊んでみてください。偕成社が50周年を記念して刊行したノンタンのポップアップ絵本『ノンタンのおうち』を等身大にして、実際に中に入って遊べるようにしました。キッチンやお風呂場などが立体化されていて、すごく楽しい絵本です。会場のおうちには、6つのスクリーンがあって、近づくとノンタンが出てくるなど面白いテクノロジーを使った楽しいしかけを用意しています。


同じコーナーには、子どもたちに大人気の『ノンタンたいそう1・2・3』をもとにした、展覧会オリジナルアニメーションを投影。ノンタンの動きにあわせて、子どもも大人も一緒に思いっきり踊りましょう! 頑張って踊っていると、ノンタンの声も聞こえてきます。

フレッシュな魅力を伝えた展覧会ビジュアル
草刈 ここで、佐々木さんに改めてインタビューをしたいと思います。本展のアートディレクションを担当してみていかがでしたか?
佐々木 僕自身がノンタンで育った世代で、自分の子どもにも読ませています。でも、まさか仕事でノンタンに関わるとは思ってもいなくて、人生って意外なことが起こりますね。自分なりの新しいノンタンを見せたいという気合いで臨みました。
草刈 チラシやポスターのビジュアルは、どのようなイメージで作っていったのですか?
佐々木 ノンタンの絵本を改めて読むと、描かれる線の使い方が特徴的だと気づきました。輪郭のギザギザの線だったり、ふにゃふにゃ、ぐるぐると、たくさんのエフェクトの線だったりが面白い。これらを軸に、ノンタンの元気なところや絵本の賑やかさを表現しようと考えました。ここまでアップになっているノンタンもめずらしいですよね。



草刈 色使いも目を引きますね。
佐々木 フレッシュなイメージにしたかったので、色についてもすごく検討しましたね。ノンタンは、いい子だけどそれだけではないと思っています。ちょっと意地悪な部分や、おかしなところもあるけど、それは誰だってそうですよね。かわいいだけではない魅力の部分を色に反映していきました。
草刈 出版やデザイン関係の方は見たらわかると思うのですが、このポスターのインクは特色(*)だけを使ったので、とても色の印象が強いです。特色印刷はお金がかかるのですが、これはお金をかけて作る理由があるなと痛感しました。ノンタン展の予告チラシをPLAY! MUSEUMに置くと、毎回どんどんなくなっていきましたね。
注* カラー印刷はCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)のインクを掛け合わせた印刷が基本ですが、特色印刷とはこの4色以外の特別に調合されたインクを使ったもの。
世界初!? 子どものための図録
佐々木さんは今回、展覧会に合わせて刊行した3冊の本(いずれもブルーシープ)もデザインしています。1冊目は展覧会図録『ママノンタンの原画集』。2冊目の『あれあれ ノンタン』は大人の心と頭をやわらかくほぐすような絵と言葉の本です。そして、3冊目の『ねえねえ ノンタン』は子どものための展覧会図録です。
草刈 『ねえねえ ノンタン』は、展覧会でノンタンと遊んだ感覚をそのまま持ち帰れるような子どものための展覧会図録を作りたくて、佐々木さんに構成を含めてお願いしました。こういう図録は世界初なんじゃないかと思っています。
佐々木 線は黒、耳はピンクというように皆がイメージできるノンタンらしい色がありますが、この図録ではページごとに色をどんどん変えました。絵本とはまた違う印象になると思います。また、「ぱぁ」「べろりんこん」とか、音で楽しめる言葉とともに展開するので、0〜2歳くらいの小さな子から楽しめます。



草刈 僕は、この図録を読んで、ノンタンの絵本の読み聞かせをしてもらっている子どもたちの頭の中をのぞいたら、こんなふうになっているのかもしれないと想像しました。ノンタンの世界観を壊さないようにしながら、新しいものを作るのは本当に難しいことだったと思うので、大人も含めてぜひ多くの人に見ていただきたいです。
作者キヨノサチコさんの制作の裏側
最後は原画展示のコーナーへ。絵本の原画約50点に加えて、ラフスケッチ、校正原稿など絵本の制作の裏側がわかる貴重な資料や、キヨノさんの作業机を再現したコーナーもあります。




草刈 ここで、キヨノさんの担当編集者だった千葉さんにお話をうかがいたいと思います。原画をいつも受け取りに行かれていたそうですね。
千葉 キヨノさんは「原画は郵送で絶対に送りたくないから、直接取りに来てね」とおっしゃっていました。キヨノさんは、引越し魔で福岡、沖縄、ロサンゼルスと色々なところに住んでいらしていろいろなところへうかがいました。最後はハワイで暮らされていました。海がお好きで、すべて海のそばなんです。
草刈 原画のここをぜひ見てほしいというところはありますか?
千葉 佐々木さんもおっしゃっていましたが、ノンタンのギザギザの線って、やはりすごくいいですよね。キヨノさんご本人は下手なだけよ、なんておっしゃることもありましたが、実は全然違います。すごく丁寧に考え抜いて描かれていますのでぜひ見ていただきたいです。すべて色を塗ったあとに輪郭の線を引くので、そのときがものすごく緊張するんだっておっしゃっていました。

草刈 一見、ラフで、少し物足りないとも思わせるようなアンバランスな線の表現はとても愛おしいです。
千葉 それから、最後にノンタンの目を描くときがものすごく緊張するともおっしゃっていました。原画を見ていただくと、ホワイトで修正した部分はほぼないことがわかります。毎回すごい集中力で描かれていました。あるとき、少しだけ手直しする部分があり、「1時間くらい休憩していてね。やっときますから」とおっしゃられたので、私は外出したんです。それで、戻ると、出たときとまったく同じ姿勢で机に向かっていらっしゃる。本当に少しの直しだったので正直びっくりしたのですが、キヨノさんの背中をみたときに、こんな集中力で一冊描かれるって本当に大変なことだと改めて思いました。描き終わったら寝込んでしまわれたという話もよく聞きました。
草刈 それだけ根を詰めて描かれていたんですね。
千葉 そうですよね。キヨノさんは絵本を制作されるときは、ノンタンになりきっていたのではないでしょうか。こういうふうに描けば子どもが喜ぶとかそういうことではなく、子どものような心を持ってキヨノさん自身が面白いと思ったことをノンタンにさせていたのだなと思っています。
草刈 ノンタンは喜怒哀楽がはっきりしています。楽しければニコニコしていたいし、嫌なことがあったら怒りたい。友達と喧嘩してもまたすぐ仲良くなったり。大人も、ノンタンになりきって展覧会を楽しんでほしいですね。
最後に、本日はキヨノさんのご長女の美佳さんがお住まいのハワイからお越しくださっていますので、ご紹介させてください。ひとことだけいただきたいと思います。
清野美佳 展覧会の開催を天国の母がいちばん喜んでいると思います。みなさん、自由な心で楽しんでくださいね。
ノンタン誕生から50周年。変わらず元気いっぱいのノンタンを盛大にお祝いし、子どもも大人も一緒に思い切り遊んでください。





