企画展示「どうぶつかいぎ展」は、エーリヒ・ケストナーの絵本『動物会議』(1949年刊行。日本語版は池田香代子訳、岩波書店より)をテーマにした展覧会です。
展覧会を見た、絵本家の広松由希子さんからメッセージが届きました!
広松由希子さん(絵本家)
『動物会議』はね、半分実話です。1945年、敗戦直後のドイツで「この混乱した世界を正すことを、子どもたちからはじめましょう。そうすれば、子どもたちがおとなたちに、すすむべき道を示してくれるでしょう」と語った、ケストナーとなかよしのゾウがいました。
児童書の評論家で編集者のフクロウや、長靴下のお話で知られる白クマなどが寄り集まって、子どもの本で世界平和をつくろうと、本気で会議をしたんです。そうして49年にミュンヘン国際児童図書館が、53年にはIBBY(国際児童図書評議会)が設立されたんですね。
絵本『動物会議』が出版されたのは、1949年。今読むと文が長めで、当時の人種やジェンダー表現にひっかかる部分もありますが、大切なのは「動物たち」が本気でゆかいに会議をしたということ。
PLAY! の展示からは、2022年に生きる動物たちの本気の遊びが伝わってきて、ちょっとひるみ、立ち止まり、体にあたたかい血が巡るのを感じました。
*参考人物
イェラ・レップマン(1891-1970)ユダヤ人の父をもつドイツのジャーナリスト、作家。ヒトラー台頭中はロンドンに亡命するが、45年に帰国し、ミュンヘン国際児童図書館やIBBYを創立、子どもの本を世界平和の架け橋にと考えた。
ベッティーナ・ヒューリマン(1909-1983)スイスの絵本編集者、研究者。レップマンを支えて子どもの本の国際交流に尽力。日本の絵本に早くから注目し、東西交流のためブラチスラバ世界絵本原画展(BIB)の発展にも尽力した。
アストリッド・リンドグレーン(1907-2002)スウェーデンの児童文学作家、児童書編集者。その著書は世界中の子どもたちに愛され、100カ国以上で出版されている。代表作に『長くつ下のピッピ』『やかまし村の子どもたち』など。