「谷川俊太郎 絵本★百貨展」の歩き方(前編)

子どもから大人まで誰もが楽しめるおもしろい展覧会

詩⼈・⾕川俊太郎の絵本作品にフォーカスした「⾕川俊太郎 絵本★百貨展」。展覧会では約20冊の絵本を取り上げ、多彩なクリエイターとともに、絵本の原画、絵や⾔葉が動き出す映像、朗読や⾳、巨⼤な絵巻や書き下ろしのインスタレーション作品などを展⽰しています。

今回はそんな「絵本★百貨展」の歩き方を紹介します。展覧会の予習にぜひご覧ください!

会場写真:高橋マナミ

○はじめに

絵と言葉を組み合わせて生まれる「絵本」。1960年代から絵描きさんや写真家さんと可能性を追求し、ユニークな作品を作り続けている谷川俊太郎(ここからは「しゅんたろ」)さん。これまで生み出された多彩な絵本の世界を、今を生きるわたしたちが、今の表現で楽しむ、そんなおもしろい展覧会です。

まず目に飛び込んでくるのは、すてきなクラシックカーです。1955年製のフランス・シトロエン社の名車、2CV(フランス語でdeux chevauxは2馬力の意味)。実は、車が大好きなしゅんたろさんが初めて購入したのと同じ型のものなんです。しゅんたろさんの「好きなもの」は、会場の中にところどころで登場します。

さあ、入口のしゅんたろさんの詩「えほんのくに」をじっくり読みましょう。心がふわりと軽くなったら向かいましょう、絵本から飛び出した、おもしろい場所へと。

○『絵本』 (写真・谷川俊太郎)的場書房 1956年(2010年復刊 澪標)

これは1956年にしゅんたろさんが詩と自分で撮った写真でつくった第4詩集です。絵と言葉の響き合いに手応えをつかんだ、はじまりの「絵本」なのです。

○『ことばあそびうた』(絵・瀬川康男) 福音館書店 1973年

まずは右側の壁にある、鈴の音が鳴るペルーの民族楽器を手にとります。羊の爪とマイチルという木の実を乾燥させた「チャクチャスチャフチャス」という愉快な名の楽器です。

準備ができたら元気よくジャンプ!
おなじみ「けん・けん・ぱ」のリズムで、しゅんたろさんの国民的な代表作を体で感じてみましょう。日本語の「音」と「リズム」がおもしろいのです。

かっぱ かっぱ らった
かっぱ らっぱ かっぱ らった
とって ちって た

楽しいけんけんぱをつくったのは、アートディレクターの柿木原政広さんです。

○『まるのおうさま』(絵・粟津潔)福音館書店 1971年

お皿、シンバル、タイヤ、コンパス、レコード、国旗、地球まで、まるいものたちが「われこそがまるの王!」と突然競いあう、奇想天外な絵本です。

リズミカルで勢いのある言葉と色鮮やかな絵に、音や動きを加えたアニメーションがおもしろい!

つくったのは、映像作家の坂井治さんです。

○『こっぷ』(写真・今村昌昭) 福音館書店 1972年

まさか、こっぷは水やジュースを飲むためのものだなんて思っていませんか?

こっぷは みずを つかまえる
こっぷは けむりも つかまえる
こっぷは はえを つかまえる
こっぷは はんにんも つかまえる

ほら、こっぷをあなどってはいけませんね。

こっぷは あなたを つかまえる
こっぷは みらいへ つれていく

こんなおもしろいインスタレーションをつくったのは、アートディレクターの柿木原政広さんです。

○『オサム』(絵・あべ弘士)童話屋 2021年

しゅんたろさんの詩「ぼくのゆめ」で、「ぼく」は「いいひと」になりたいと願います。
「いいひと」ってどんな人だろう? 

えかきのあべ弘士さんが「いいひと」を絵にしたらゴリラになりました。絵本から飛び出したゴリラの気配ただよう空間で、絵と言葉の響き合いをゆっくりと味わってみてください。

『オサム』『おならうた』『ぴよぴよ』『ここはおうち』『これはすいへいせん』『ままです すきです すてきです』の展示デザインを担当したのはアートディレクター/デザイナーのminnaさんです。

○『おならうた』 (絵・飯野和好)絵本館 2006年

これは、しゅんたろさん十八番のうた。

いもくって ぶ
くりくって ぼ
すかして へ
ごめんよ ば
おふろで ぽ
こっそり す
あわてて ぷ
ふたりで ぴょ

原画を鑑賞するのに、おならドームを用意しました。
中はちょっと狭くて、腰を曲げてご覧になってくださいね・・・。

○『ぴよぴよ』(絵・堀内誠一) ひかりのくに 1972年 (2009年復刊 くもん出版)

ぴよぴよ 
こけこっこ

堀内誠一さんが描いたかわいいひよこを、しゅんたろさんが冒険の旅に送り出します。
展示室のあっちこっちを歩くひよこを見つけてください。

○『ここはおうち』 (絵・junaida)ブルーシープ 2023年

しゅんたろさんとえかきのjunaidaさんが、往復書簡のように言葉と絵を交わして編んだ、最新の絵本です。とにもかくにも、美しい原画をごらんください。

○『これはすいへいせん』 (絵・tupera tupera)金の星社 2016年

ページを追うごとに言葉が連なり遊びが広がる、しゅんたろさんお得意の「つみあげうた」の絵本。切り絵でつくられた原画と言葉の積み重なりを楽しんでください。

○『ままです すきです すてきです』(絵・タイガー立石)福音館書店 1986年

ちくおんき きく くま ままです  すきです すてきです なぜか かるい いわ わらう うし と とんび みしみし しくしく くすくす すべ すべ べたべた たらりたらり

緑色のドアを開ければ、そこは愉快で自由なしりとりが絵で描かれた、夢のような世界です。

○『とき』(絵・太田大八) 福音館書店 1973年

ときは けっして あともどりしない

しゅんたろさんと、えかきの太田大八さんが、地球の誕生から、昔、自分がうまれた日、そしてさっき、いままでと、流れつづけている「とき」を一本の線のように描いた絵本です。

生まれては消え、生まれては消える。そんな物理現象の中で私たちが生きていることを、映像で感じてみてください。

壮大なアニメーションをつくったのは、映像作家の新井風愉さんです。

後編に続く

展覧会のたのしみかたがよくわかるムービーも公開中!

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2023年6月17日(土)・18日(日)、7月1日(土)・2日(日)10:00-18:00/「谷川俊太郎 絵本★百貨展」関連企画