tupera tuperaによる作品ガイド①「原画コーナー」
tupera tupera のふたりが、展覧会「tupera tuperaのかおてん.」をガイド。ひとあし先に、会場にどんな作品があるのか、一緒にのぞいちゃいましょう!
会場写真:吉次史成
PLAY! のエントランスを入ってすぐに見える、ぐるりと大きな木の壁。その向こうに、展覧会「tupera tuperaのかおてん.」の入り口があります。受付で「かおシール」をもらったら、まずは鏡を見ながらお顔にペタペタ。子どもも大人も、いつもの自分とはちょっとちがう、おもしろい顔におめかし(?)します。
まず「かおシール」でおめかし
―展覧会の受付で「かおシール」をもらいました。
亀山達矢 自分の顔に貼れるフェイスシールで、全部8種類あります。シールのワークブック『かおノート』(コクヨ)に登場するパーツを選んでシールにしました。『かおノート』を作ったコクヨの北野嘉久さんに相談したらノリノリで、素材を見つけてきてくれたんですよ。
会場に入る前に、これを貼ってくださいね。ふつう展覧会の会場って、お客さんどうしがかかわったりしないじゃないですか。でも今回は、他人の顔を見て笑いあったり、顔の楽しさやおもしろさの連鎖が起きるといいなと思って。
子どもだけではなく、付き添いで来た大人の顔がおもしろくなっていたらいいじゃない。「あのおじいさんの顔見て、ぷぷ!」って。でもよく見ると、自分の顔も変なの(笑)
中川敦子 本当はね、お客さんの顔が一番バリエーション豊かでおもしろいわけですよ。
亀山 まず自分の顔がおもしろくて、その上で、いろんな顔の作品を見て楽しんでもらいたいんです。
『かおノート』からはじまる展覧会
―そういうわけで「かおシール」を貼り、入場します。最初は、tupera tuperaの顔にちなんだ絵本の原画コーナーです。トップバッターは、みんなも大好きな『かおノート』ですね。
亀山 展覧会のテーマを顔にしたきっかけが、『かおノート』だったんですよ。展覧会の計画がはじまった2018年はちょうど発刊10周年で。自分たちの作品を見返した時、『かおノート』以前と以後で作品の方向性が変わったな、ってつくづく思って。
初期の頃は、全身の絵、風景の絵が多かった。でも『かおノート』の後、『やさいさん』(学研教育出版)『あかちゃん』(ブロンズ新社)など、顔にフォーカスしたアイデアや絵作りが増えていきました。
それで、「顔の展覧会にしよう」って決めたんです。
ほかの人の視点で原画を紹介
―なんだか、ふつうの絵本の原画展とはちがう気がします。
中川 おもしろいでしょう! 実は、この原画コーナーの構成は、自分たちのアイディアではなくて、まる投げしたんですよ(笑)
―まる投げ、ですか?
中川 この展覧会より前に、私たちの絵本の原画を紹介する展覧会「tupera tuperaの絵本の世界」が全国を巡回していました。
その時は、私たちがこまかくディレクションしたんです。原画をおくちょっとした角度から、背景の壁の色、額の色、すべて指示して。それはもう十分にやったので。今回は、ほかの人の視点で原画を紹介してほしいな、って思ったんです。
そこで、展覧会そのものをプロデュースしているブルーシープの草刈大介さんとまきちゃん(佐藤万記さん)、デザインチームのminna(角田真祐子さん、長谷川哲士さん)、東京スタデオの岩井 徹さんに、いったんまる投げ。
どういう原画コーナーがいいのか、というところから考えてもらうことにしました。
まきちゃん(佐藤万記/ブルーシープ) tupera tuperaさんから投げてもらって、minnaさん岩井さんと何回か打ち合わせを重ねて、アイデアを出し合って、それを岩井さんが図面におこして、tupera tuperaさんに提案する、みたいな流れでしたね。
亀山 みんながSNSで楽しそうに打ち合わせしているのを眺めながら、実はドキドキしてました(笑)
中川 できあがるまで、完全ノータッチ。できあがってから、すごく変わったことになっていてびっくり!
いわゆる「原画展」って、原画を一番大事にするんです。今まで、きれいに額に入れて、順番通りに飾ってあるような展示しか見たことがなかったから、本当に驚きました。
原画が楽しく遊んでいる!?
亀山 原画って未完成の絵だから、正直いうと、それだけでは見ごたえがないじゃないですか。文字が入って、綴じられて、一冊の絵本になった時、やっと作品になる。ずっと、原画は絵本に勝てないと思っていました。
中川 もちろん絵本作りの裏側を見られる楽しさはありますけどね。
亀山 だから僕らが原画展をやる時は、作り手としての思い、プロセス、そして完成した絵本をきちんと見せた上で、原画を紹介する。そうでないと、絵本の原画のおもしろさは伝わらない、と思っていたんです。
でも、今回はそうではありません。もともとの絵本のアイデアに合わせて、原画そのもので遊んじゃおう、という展示になっています。
僕らでは、額を傾けるとか、立たせるといったアイデアは出てこないですよ。ほかのクリエイターたちが客観的な目線で、「原画を使って、どうやっておもしろく遊ぼうか」と考えてくれた結果です。
『かおノート』の原画なんて、本来はただののっぺらぼーですよ!読み手がパーツのシールを貼ったら完成するので。でもminnaさんのアイデアで、パーツのモビールで天井から吊るしたり。
僕らの絵本のことをよく理解したうえで、さらに空間をあつかっている人たちだからこそ生まれたアイデアがとてもおもしろい。原画はもちろんだけど、原画ひとつひとつの見せ方の工夫も楽しんでもらえると思います。