PLAY! インタビュー 2m26「みみをすますように 酒井駒子」展のケースや額縁を準備中

背伸びしたり、かがんだりして酒井駒子のユニークな世界を楽しんで

PLAY!MUSEUMで2021年4月10日(土)から始まる「みみをすますように 酒井駒子」展に向けて、京都市北部の山あいにある「2m26」の作業場で準備が進んでいます。会場全体の展示デザインを考え、酒井駒子の約250点の原画などを展示するケースや額縁をつくっているのはメラニー・エレスバクとセバスチャン・ルノーのふたり。地元・京都の杉材を使い、作業場にこもるような制作が1カ月ほど続いていました。

取材・執筆:らび

左:セバスチャン・ルノー 右:メラニー・エレスバク

人間味あふれる美術館。
背伸びしたり、かがんだりして酒井駒子のユニークな世界を楽しんで

ふたりは2015年に家具、建築、空間アレンジメントを手掛けるブランド「2m26」を始めました。出身のフランスと京都を拠点に制作を続けています。

 もう東京・立川に行ってPLAY! MUSEUMは見てきましたか?

「はい。人間味があって、だれでも広く受け入れてくれる。いい雰囲気の美術館だね。」
とセバスチャン。

隣からメラニーが割って入るように
「いかめしい感じがしないから、美術館を見る目が変わったかな」。

体を使って感じて

 どんな展示ケースや額縁が、PLAY! MUSEUMの会場にどう並べられるのでしょう。今から楽しみです。少しだけ、展示プランを話してくれませんか?

大量の杉材

「ただ目で見るだけではなくて、体で感じてもらえる展示にするつもりだよ」
とセバスチャン。

メラニーと一緒に話してくれた内容をざっくりまとめると、原画を一枚一枚、同じような大きさの額に入れ、同じ高さに展示するのではないようです。

ある原画は背伸びしてのぞき込むように、また別の原画は体を折り曲げるようにかがんで鑑賞する。つまり、体全体で酒井駒子の世界を受け止める展示になりそうです。

展示イメージ

ちなみに「2m26」というのは2メートル26センチという意味です。これは、人間が腕を上に伸ばして立った標準的な高さだそう。

なになに、これを読んでいるあなたはそんなに大きくない?
ヨーロッパの人の標準です。メラニーもセバスチャンもフランス出身ですからね。実はこの数字、フランスの建築家ル・コルビュジエの造語「モデュロール」に基づいているのです。

人と木のぬくもり

建築家でありアーティストであるふたりが「2m26」というブランドを名乗り始めたのは2015年のことでした。建築だけでなく、家具、空間アレンジメントについて考え、創作を続けています。

人間の体の寸法からブランド名を拝借していることからわかるように、ふたりの創作の原点は生身の人間にあります。木のぬくもりを感じさせる無垢材を使い、無駄をそぎ落としたデザインが特徴です。

日本で注目を集めたのが、2015年11月に敢行された屋外アートパフォーマンス「TOKYO CROSSING」でした。別のアーティストを含めた計4人で、東京の浅草から渋谷までを20日間ほどかけ、自分たちが作った家具を携えて移動したのです。

ふたりは、京都市内の古い民家を改築し、自宅であり、事務所であり、アトリエである「Kyoto House」を2020年2月26日に完成させました。
とことん2と26にこだわっていますね。

唯一無二の存在感

ふたりに酒井駒子の絵の魅力を尋ねました。

「酒井駒子の原画を間近で見ると、時にはボール紙や段ボールといった紙の上に描かれています。そして代表作の多くは、まず黒で一面に下塗りがされ、その上から絵の具で形を描き、色がつけられています。あちこちに描き残されたようなところがあるので、まるで刷毛でこすったかのような絵の具の感じが印象的ですね。」

セバスチャンはこう表現しました。
「見ていると、指先で触れてみたい思いに駆られるよ」

わかります、わかります。でも、原画には触れないでくださいね。

メラニーはこんな感想です。
「駒子の絵は人間味にあふれており、唯一無二という意味でのユニークという言葉がぴったりです」

そうした唯一無二の酒井駒子の作品世界をPLAY! MUSEUMで展示するため、ふたりでアイデアを出し合いました。

そしていま、制作は佳境を迎えています。
月末にはいよいよPLAY! MUSEUMにケースや額縁が運び込まれます。

(敬称略)

2m26

フランス生まれのアーティストであり建築家のメラニー・エレスバクとセバスチャン・ルノーのふたりが2015年に設立したブランド。家具、建築、空間アレンジメントと幅広く活動する。自然や環境を重視し、シンプルで美しく、しかも実用性を追求する。京都市内の古民家を改築し、2020年2月26日に住宅、事務所、アトリエを兼ねた「KYOTO HOUSE」を設けた。

取材・編集:らび

自ら「らび」と名乗っている初老のおじさんです。うさぎが好きで「ぼくは、うさぎの仲間」と勘違いしているからです。ディック・ブルーナさんを尊敬しています。著書に『ディック・ブルーナ  ミッフィーと歩いた60年』 (文春文庫) 。