PLAY! インタビュー 君和田敬之さんと草刈大介が語る「ミッフィー展」への思い
PLAY! MUSEUMで開かれている「誕生65周年記念 ミッフィー展」には君和田敬之さんと草刈大介がかかわっています。朝日新聞社文化事業にお勤めの君和田さんは「with」をテーマにして、オランダのディック・ブルーナさんのミッフィー(うさこちゃん)絵本誕生65周年を記念する展覧会を企画しました。2020年春に東京・銀座で開かれた後、全国に巡回しています。PLAY! MUSEUMプロデューサーの草刈大介は、立川への巡回にあたり「ちいさなぬくもり 66のおはなし」という新たなテーマを加えました。そんなふたりに「ミッフィー展」に込めた思いを聞きました。司会はらびです。
取材・執筆:らび
撮影:清水奈緒
―君和田さん、草刈さん、こんにちは。らびです。よろしくお願いします。
立川での「ミッフィー展」は主催がPLAY! MUSEUM、朝日新聞社となっていますね。
もともとは朝日新聞社がオランダのブルーナさん側と交渉を重ね、ミッフィーの絵本誕生65周年の展覧会を企画したと聞いています。
昨年春に東京・銀座で開かれ、神戸や福岡、青森など日本各地を巡回して2021年夏に再び東京の立川に巡ってきました。
1年以上の間があき、銀座と立川という場所の違いはあってもどちらも都内ですから、まったく同じ展覧会を開くわけにはいきません。
それに今年は絵本誕生から66周年。そこでPLAY! MUSEUMの独自の企画として「ちいさなぬくもり 66のおはなし」というテーマを加え、展示の構成にも手を加えたのですね。
草刈「そうです。『ちいさい』とか『ぬくもり』というフレーズは、もともとのテーマ『with』に近いものはあります。コアなブルーナさんやミッフィーのファンの心にささるのではないでしょうか」
ブルーナさんと一緒
―なるほど。それでは君和田さん。65周年の「ミッフィー展」のテーマを「with」とした思いを教えてください。
君和田「2005年の50周年から、朝日新聞社は『ミッフィー展』を主催してきました。これまで55周年、60周年と5年おきに開いています
過去3回の『ミッフィー展』と大きく違うのはブルーナさんが2017年に亡くなったということ。ブルーナさん没後初めての『ミッフィー展』ということで、『これからもブルーナさんと一緒、ミッフィーともずっと一緒の時間を過ごしていこうね』という思いを込めて『with』を前面に打ち出しました」
―そうですか。ちなみに草刈さん。いま、君和田さんが紹介してくださったミッフィー50周年の展覧会を企画したのは、草刈さんですよね。
草刈「そうでした」
―どんなきっかけで始まったのですか?
草刈「僕が朝日新聞社に勤めていたころ、大阪にあったサントリーミュージアム[天保山]で2003年にブルーナさんの大がかりな個展が開かれ、お手伝いをしました。ブルーナさんの作品の全容を見せようという展覧会でした。
その時にはミッフィーは全体の四分の一ほどしか出展されず、もっとミッフィーを紹介したらいいのにな、という思いが残りました」
―ならば、自分でミッフィー展を企画してみようと?
草刈「そうです。いろいろ調べてみたら、オランダで最初の『ちいさなうさこちゃん』(初版)が出版されたのが1955年だから、2005年は50周年とわかりました。
そこで、当時のブルーナさんとの日本側窓口担当者や会場となる百貨店と相談しながら準備を進めたのです。まあ、なにごとにも物事には前段があるのですよ」
5年ごとの約束
―おお、含蓄がある言葉ですね。50周年展を始めた時には、5年ごとに開くという構想を描いていたのですか?
草刈「いいえ。そんなことはちっとも考えていませんでした。2回目があるなんて、思ってもいませんでしたよ。
それが開いてみると、大成功。見に来てくださったお客さんがとても喜んでくださった。じゃあ、55周年を開いてみようということになり、開くとまたまたお客さんが喜んでくださった。そして2015年の60周年展まで僕がかかわることになったのです」
―その60周年展を最後に草刈さんは朝日新聞社を退社し、君和田さんが引き継いだというわけですね?
君和田「そうです。今回を含めて4回目になりますから、5年ごとに日本で『ミッフィー展』が開かれるのはミッフィーを好きな人たちとの約束のようになっています。
5年ごとにブルーナさんが描いた原画や残したメモやスケッチなどに日本であえるというお約束ですね。それを楽しみにしている人たちが全国にいて、しかも展覧会は全国を巡回するというのが大事なことだと思います」
―君和田さんが中心になり企画した「ミッフィー展」に、立川では草刈さんのアイデアもあって独自のテーマが加わっています。展示を見た感想はいかがですか?
君和田「PLAY! MUSEUMでの展示では、いろいろなクリエーターさんの目から見たミッフィーの解釈も展示されていますよね。
さすが、という感じで、ここでなければできない展示に仕上がっています。本当にピタッと融合していると感心しました」
草刈「ここが2020年の6月にオープンして1年が過ぎました。コロナの影響もあり2カ月も開館が遅れた上に、オープン記念の式典も軒並み中止になるなど最悪のスタートでした。
思っていたようにものごとは進まないし、頭の中で考えたことと現場で起きていることは違うということを実感しています」
君和田「とはいえ、PLAY! MUSEUMにふさわしい展示だし、65周年の『ミッフィー展』を企画した立場としてもうれしいですよ」
草刈「なんか、優等生みたいな答えだなあ(笑)」
君和田「そうですかね(笑)」
70周年、さらにその先へ
―65周年の次は70周年ですね。2025年の「ミッフィー展」がいまから楽しみです。
草刈「ミッフィー55周年のときには、50周年展の時に出したグッズのバッグを持ってきて展覧会を見に来てくださったお客さんがいました」
―毎回、展覧会を楽しみにしているお客さんがいるわけですね。
君和田「そうですよね。いまも前回や前々回の『ミッフィー展』のグッズを持って展覧会場に来てくださるお客さんはいます」
草刈「その意味では、君和田さんが言ったように、『ミッフィー展』が5年ごとのお約束事になって開かれ続けている意義は大きいと思いますよ」
君和田「今回のテーマの『with』に関連させて言えば、日本中で『ミッフィー展』を届けたいなと思っている人たちと思いを分かち合うという意味でのwithもあると思います。『ミッフィー展』をこれからも見たい、届けたいという人たちがいるのなら、開き続ける意義はありますよ」
―いつまでもwithでいたいですね。ありがとうございます。
君和田敬之さん
朝日新聞社文化事業部勤務。今回の「誕生65周年記念 ミッフィー展」のほか「絵本のひきだし 林明子原画展」「誕生30周年記念 ウォーリーをさがせ!展」など絵本の原画展を中心に数多くの展覧会を企画している。
草刈大介
朝日新聞社勤務を経て、2015年に展覧会を企画し、書籍を出版する株式会社「ブルーシープ」を設立して代表に。PLAY! MUSEUMのプロデューサーとして展覧会、書籍のプロデュース、美術館や施設の企画・運営などをてがける。
らび
自ら「らび」と名乗る初老のおじさん。うさぎが好きで「ぼくは、うさぎの仲間」と勘違いしています。著書に『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』 (文春文庫) 。『ちいさなぬくもり 66のおはなし』(ブルーシープ)のテキストも執筆。