PLAY! インタビュー 手塚貴晴+手塚由比と小栗里奈が語るPLAY! PARKのこと(後編)

外に飛び出す!?どんどん広がるPLAY! PARKの未来

建築家、グラフィックデザイナー、アーティスト。PLAY! には、たくさんのクリエイターたちが関わっています。そんなクリエイターの皆さんに、PLAY! の舞台裏の話を聞くインタビューシリーズです。

昨年6月、PLAY! PARKはユニークな子どもの屋内遊び場としてオープンしました。開館から約半年が経ち、コロナ禍に負けない子どもたちの歓声が今日も響いています。その裏側では、遊ぶことの大好きな大人たちが、「(子どもたちが)自分の“好き”に出会うきっかけを作りたい」と楽しく奮闘中。PLAY! PARKを設計した手塚貴晴さんと手塚由比さん、キュレーターの小栗里奈さんが、オリジナル遊具や、PLAY! PARKのこれからについて語ります。

撮影: 渡邊有紀

楽しむ気持ちがパワーになる

手塚貴晴さんと小栗里奈さん

貴晴 そういうわけで、PLAY! PARKではいろんなことが起きるわけですよ。その時にクリエイティブな人でないとものごとが進んでいかない。その素質とは、ものを作るということを掛け値なしに楽しめることだと思う。「おいしいものを作れ」と言ってもおいしいものを食べたことがなければとできないのと同じで、根本的に楽しいことを知らない人は難しい。

由比 単純に「楽しいことをしたい」という欲求だけで前に進んでいけたら、いいものができると思いますね。いろんな制約や壁があっても負けないから。

小栗 そうですね。もちろん楽しいことだけではないけれど、それがパワーになっていくので。

大変だったことはありますか。

小栗 さまざまな立場の人が関わっているので、「ほかにはないことをしよう」と言っても、理解してもらうためにはたくさんのやりとりがありました。子どもの遊戯施設としての安全管理はもちろん気をつけながら、既存の常識や不安をひとつひとつ取り払っていくのは大変でした。子どもたちが遊んでいる様子を見てもらって、今は「これで大丈夫なんだ」と安心してもらっています。

子どもは壊すのも好き

遊具について教えてください。「バルーン・モンスター」(風船)の次は新聞紙ですね。

小栗 はい。スタッフのあいだでは「牡蠣の養殖場」って呼んでいるんです(笑)。子どもたちが新聞紙をちぎるからどんどん下に落ちるんですが、今度はそれを拾ってベッドを作ったりしています。

貴晴 バルーンモンスターもそうですが、これのいいところはね、一見なんということもないんだけれど、そこに子どもが加わった途端に面白くなるんですよ。子どもだけが知っている楽しさがあるの。

由比 家では新聞紙をちぎったら怒られるけど、ここなら大丈夫。そういう感じがいいですよね。

貴晴 子どもって壊すのが好きだもんね。壊すし、倒すし、ちぎるし、プチプチつぶすし(笑)。バルーンモンスターも風船が割れるのがいいの、これも紙が破けるのがいいんだと思う。

小栗 最初はスタッフが「子どもたちがちぎっているけど大丈夫ですか」と心配して聞いてきたのですが、子どもたちが遊んでいるのを見て「むしろちぎると楽しくなるんだ」ということがわかってくる。子どもたちが教えてくれるんですよね。

新聞紙でできた遊具はまるで牡蠣の養殖場?

PLAY! PARKのこれから

オープンから半年が経ち、今はどんな状況ですか。

小栗 コロナがあったからこそ色々と気づくことができたし、その気づきをフレキシブルに行動に移してきました。遊具の組み立てや撤去も、ただの作業になっちゃうと遊んでいる子どもたちの邪魔になるので、それ自体が遊びになるようにスタッフと一緒に工夫しています。

貴晴 コロナは大変だけれど、試行錯誤する時間ができましたよね。この半年で、何がおもしろいか、おもしろくないかがわかってきた。

小栗 奥に、絵の具のスペースがあるんですけど、そこは絵を描くためではなくて、絵の具で遊ぶ場所なんです。みんなで絵の具をぐちゃぐちゃに出して「すっきりしたー!」って。もちろんなかにはずっと絵を描いている子もいるし。この椅子も、ひとりが動かしたら、もうひとりが倒して、最後はみんなで打楽器にして音を出して遊んだり。

貴晴&由比 いいねえ!

小栗 私たちが想定していなかったことが次々と起こっていて、子どもたちがそれを見つけて「いいね、採用!」みたいな感じ。PLAY! PARKは生き物のようにどんどん変わっていますよ。

これからやってみたいことはありますか。

小栗 子どもたちがバルーンモンスターや新聞オブジェを分解してあちこちに持ち運んでいくんですよね。まるで御神輿みたいに。であれば、そのままPLAY!から飛び出して、グリーンスプリングスのなかで遊ぶこともやってみたいんです。

貴晴 私はどんどんPLAY!の輪を広げていきたいですね。来るものは拒まず、学生も、クリエイターも、いろんな人が集まって参加していく形にしていきたい。まだまだPLAY!の取り組みは始まったばかりです。

由比 そうして子どもが自由に遊べる環境がどんどん広がっていくといいですよね。

手塚建築研究所がデザインした、発砲スチロールでできたPLAY! ソファはPARKの至る所に

最後に、小栗さんへのエールをお願いします。

貴晴 まんまでいてほしい。そのまま歳を取って50代60代になってほしい。

由比 その通りですね。大変なこともあると思うけれど、負けずに楽しんで。

小栗 ありがとうございます!すでにのびのびやらせてもらっていますが、おふたりのPLAY! に対する情熱と遊びをとことん楽しむ気持ちを見習ってがんばります。

大型遊具「バルーン・モンスター」は2021年春まで

前編はこちら

手塚建築研究所(手塚貴晴+手塚由比) 

OECD(世界経済協力機構)とUNESCOにより世界で最も優れた学校に選ばれた 「ふじようちえん」を始めとして、子供の為の空間設計を多く手がける。 近年ではUNESCOより世界環境建築賞(Global Award for Sustainable Architecture)を受ける。手塚貴晴が行ったTEDトークの再生回数は2015年の世界7位を記録。 国内では日本建築学会賞、日本建築家協会賞、グッドデザイン金賞、子供環境学会賞などを受けている。手塚由比は文部科学省国立教育政策研究所において幼稚園の設計基準の制定に関わった。 現在は建築設計活動に軸足を置きながら、OECDより依頼を受け国内外各地にて子供環境に関する講演会を行なっている。その子供環境に関する理論はハーバード大学によりyellowbookとして出版されている。 

小栗里奈 

PLAY! PARKキュレーター。 2019年名古屋芸術大学デザイン学部スペースデザインコース卒業。愛知県春日井市にて、工房兼ギャラリー「NoSiA」を共同運営。子どもや家族に向けたワークショップを中心に、イベントの企画、空間・プロダクトの制作を行う。第26回日本インテリア学会卒業作品展優秀賞。デザイン女子No.1決定戦2019インテリア・プロダクト部門1位、オーディエンス賞受賞。趣味は、旅先でみみかきを集めること。