PLAY! インタビュー「tupera tuperaのかおてん.」の作り方(後篇)

「これまでのものづくりの集大成だと思う」

PLAY! MUSEUMのオープンを飾る「tupera tuperaのかおてん.」。数多くの人気絵本を生み出すユニットtupera tupera(ツペラツペラ)による最新の展覧会は「顔を遊びつくす」がテーマ。tupera tuperaとクリエイターの仲間たちが寄ってたかって顔遊びをしたら、今まで見たことも聞いたこともない、おもしろ展覧会ができました!
(前篇はこちら)

会場写真:吉次史成

tupera tupera

作るのが好きだからやっている

tupera tuperaの仕事は、絵本作りだけではなく、プロダクト、舞台やテレビの美術までとても幅広いですよね。

亀山 仕事は幅広く見えるかもしれないけれど、僕らからしたら、やっていることはぜんぶ一緒なんですよね。すべて、作るのが好きだからやっているだけ。

何をやるにしても手を動かして、チョキチョキ切って貼って、作っているんです。舞台美術も、テレビセットを作る時も、絵本を作るのと同じように、チョキチョキ。だから幅広くいろいろやっているという感じではないんですけれどね。

かお制作中
かお制作中© tupera tupera

中川 初期の頃から、いろんなお誘いに乗るというかたちで仕事を続けてきたので、自分たちが何者かわからずに続けてきたことはたしか(笑)。今は、絵本の冊数が増えてきたから、「絵本作家」と呼ばれることが多くなってきましたけど。

亀山 僕らって、一番はじめは雑貨を作っていたんです。Tシャツ、クッション、スリッパでしょ、木を切って照明も作ったし、いろんな雑貨を作ってはいろんなお店に卸していました。

そういうプロダクト作りがベースにあるから、絵本も舞台美術も同じような感覚。手を動かして作れるなら、僕ら、なんでも楽しいんですよ。

会場の「原画コーナー」より

仕事を依頼するほうも、「tupera tuperaと一緒なら楽しくなりそう」という期待があるかもしれません。

亀山 演劇やテレビの経験もないのに「やってみない?」と誘ってくれたのは、「新しい化学反応が生まれるかも」と期待してくれたからだと思うんです。

そういう感覚をもった人たちと一緒に、新鮮なものづくりを繰り返してきた結果、気付いたらなんとなくtupera tuperaの世界が広がっていた、という感じですね。

そういう感覚をもった人たちと一緒に、新鮮なものづくりを繰り返してきた結果、気付いたらなんとなくtupera tuperaの世界が広がっていた、という感じですね。

中川 舞台とかテレビ、展覧会って、裏側でたくさんのプロフェッショナルたちが関わって、作りあげていますよね。そういう現場で仕事をさせてもらった経験は、自分たちにとってプラスになっていると思います。

だから今回のような大きなプロジェクトに声をかけてもらって、「ひるまず一緒にやったろう!」って思えたのも、そうした経験が生きていると思います。

会場の「tupera tuperaの絵本コーナー」

ふたりはなかよし!?

ところで、おふたりの役割分担ってあるのですか。

亀山 特に決まった分担はないですね。強いていうなら、僕はアイデアを出すのが好き。いいアイデアが出た後は、一周まわりを見ながらどうなのか考えたり、アイデアを泳がしてみます。

敦子は、レイアウトや空間作りが得意です。今回、手塚建築研究所が作ったPLAY!MUSEUMの「うず巻き」のなかで何を起こすか、あのなかでどう構成していくか、主に敦子が図面を見て考え、みんなと相談しながら進めていきました。

中川 ふだん、顔を作るのは亀山が担当することが多いんです。私は、そのまわりの背景とか、胴体や服を作ることが多い。でも、今回はたくさんのバリエーションが必要だったので、私も一緒にアイデアを出しながら、顔を作りました。

会場の作品「かお10」より
会場の映像作品「かおつくリズム」より

どちらがどの顔を作ったのか、わかりませんね。

亀山 17年間、ずっとそういう感じかも。相手に投げて進めてもらったり、どちらかが煮詰まったら投げたり。ケースバイケースで任せあえるのが、ユニットの良さ。例えば、僕がイベントで外に行って、帰ったら、敦子が動かしているとか。ものごとが止まらないんですよ。

中川 どちらかが風邪引いてもね。

亀山 家事もそう。どっちもできるようにしておくと、結果的にどっちも楽ができるという。

中川 どちらかが大変になっている時は、じゃあ夕飯はこっちが作るよ、とか。

会場の「原画コーナー」より

仲がいいんですね。

亀山 あの、それ単純に「なかよし」っていう意味でとらえないでほしいんです(笑)。あくまで効率として考えるとですね、「おれは一生、皿洗いはしない」って決めたら、この人に何かあったら、僕、大変なことになると思うんです。

両方ともすべてのことができるようにしておくと、相手に任せることができる。絵作りに関してもそう。自分が思っているよりも、いいものになる時もあるし。

中川 そうでない時もある(笑)

亀山 今回のように、いろんな人たちと一緒にものづくりをする時にも、みんなで楽しくやれるようにキャッチボールを進めていくことを意識します。役割分担ではないけれど、そのための役まわりみたいなことはありますね。

例えば、敦子はテキスタイル学科出身だから、作品「床田愉男」のパーツを制作してくれたAtelier Inadomeさんとキャッチボールするし、作品「かおカオス」の装飾協力をしてくれた武蔵野美術大学油絵学科版画専攻の学生たちとは僕が中心になってやる、とか。

楽なんです。脳味噌が2個あって、手も4本ある。とても楽なの。決して「なかよし」っていう意味では……

いやいや、それは紛れもない「なかよし」かと(笑)

会場の作品「かおカオス」より

これまでのものづくりの集大成

そんなおふたりにとって、「tupera tuperaのかおてん.」はどんな仕事ですか。

亀山 「展覧会を“発明”しませんか」という問いかけに、僕ら、引っ張られた。そこでハートをズッキューン!とやられたところからすべて始まったわけです。

そしてその“発明”に参加してくれたクリエイターの皆さんも、今までいろいろな仕事でかかわった人たち。そういう人たちと一緒に、また新しい挑戦ができるなんて、ものづくり冥利に尽きますよね。

なので、原画展としての集大成が「tupera tuperaの絵本の世界」だとしたら、「tupera tuperaのかおてん.」は、僕らがこれまでいろんな人たちと一緒にものづくりを楽しんできたことの集大成なのかな、と思っています。

ありがとうございました。

会場の作品「床田愉男」より

tupera tupera(ツペラツペラ)

亀山達矢と中川敦子によるユニット。絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、アートディレクションなど、様々な分野で幅広く活動している。
著書に『かおノート』(コクヨ)『やさいさん』(学研教育出版)『いろいろバス』(大日本図書)『うんこしりとり』(白泉社)など多数。海外でも様々な国で翻訳出版されている。NHK Eテレの工作番組「ノージーのひらめき工房」のアートディレクションも担当。絵本『しろくまのパンツ』(ブロンズ新社)で第18回日本絵本賞読者賞、Prix Du Livre Jeunesse Marseille 2014(マルセイユ 子どもの本大賞 2014 )グランプリ、『パンダ銭湯』(絵本館)で第3回街の本屋が選んだ絵本大賞グランプリ、『わくせいキャベジ動物図鑑』(アリス館)で第23回日本絵本賞大賞を受賞。2019年に第1回やなせたかし文化賞大賞を受賞。武蔵野美術大学油絵学科版画専攻客員教授、大阪樟蔭女子大学客員教授、京都芸術大学こども芸術学科客員教授。