「鹿児島睦 まいにち」展 巡回情報
(終了)2023年6月30日(金)―8月27日(日) 市立伊丹ミュージアム(兵庫)
(終了)2024年2月24日(土)―4月14日(日) 佐野美術館(静岡・三島)
(終了)2024年4月24日(水)―6月23日(日) 福岡県立美術館
(巡回終了)2024年9月27日(金)―10月6日(日)華山1914文化創意業園區西一館
*グッズのオンラインショップ
「鹿児島睦 まいにち」展期間中の利用案内・チケット販売について
会期中は、当日券で入場できます。土日祝および混雑が予想される日は事前決済の日付指定券(オンラインチケット)を販売します。詳しくはこちら
鹿児島睦が日々想う、
わたしたちの「まいにち」を感じる、しあわせな時間を。
“役に立たないもの、美しいと思わないものを、家に置いてはならない”
100年以上前、イギリスの芸術家・思想家、ウィリアム・モリスはこのように言いました。その思想はイギリスからじわじわと世界中に広がり、人々が日々の暮らしに目を向ける、ひとつのきっかけとなりました。 時を超え、九州は福岡で、陶芸家・アーティストの鹿児島睦(かごしままこと、1967年ー)も、人々の暮らしをよりよいものにしようと日々励んでいます。 この展覧会は、陶芸作品を中心に、テキスタイル、版画など多彩な仕事で注目を集める鹿児島睦、初の大規模な展覧会です。会場は、動物や植物をあしらったさまざまな色や形の約200点の器が、「あさごはん」「ひるごはん」「ばんごはん」のための大きなテーブルや壁面に並びます。そのほか、ファッション、インテリア、フードなどの領域でのコラボレーションから生まれたさまざまなプロダクツや作品を、「さんぽ」「おやすみなさい」など、日々の暮らしのシチュエーションで紹介していきます。鹿児島睦とその作品を通じて、私たちの日々の暮らしと、生きていくことに思いをはせる、そんな展覧会です。
展覧会の見どころ
鹿児島睦は、人々の暮らしを想い、日々、作品を作っています。展覧会では、朝に始まり夜に終わる一日のシーンにあわせて器やプロダクツを展示し、鹿児島が生み出す世界をお楽しみいただきます。
1. 動物や植物をモチーフにした新作の器 約200点
鹿児島は、器は使うものであり、見るものでもあると考え、色や形を決め、草花や生き物をモチーフにした絵皿を制作しています。陶芸家として独立した2002年以降、色々な素材や技法を試しながら現在の作風を確立し、国内外から注目を集めています。器には、プレートや鉢を中心に、丸や四角、オーバルなどさまざまな形、大きさがあります。地色は黒、ピンク、黄色、緑、白など。存在感のあるマットな手触りの器それぞれの形に合わせて、線彫りや蝋抜きなどの技法を使いながら、10色ほどの顔料で生き物と草花がグラフィカルに描かれています。犬や猫、ライオンから蛇やユニコーンといったさまざまな生き物と、抽象的で伸びやかな草花は普遍的で、使う者、見る者の想像力を広げます。
★技法の紹介
黒地・下絵付け
白い素地に複数の顔料で絵付けをしたあと、描いた絵柄を縁取るように黒い顔料を施す。
下絵付け
白い素地に様々な顔料を使って絵付けしている。
色地・下絵付け
絵柄部分の白い素地を残しながら、顔料 で色を塗る。図案のアウトラインを際立 たせるために削りを施している。
染付・蝋抜き
溶かした蝋でマスキングを施してから青の呉須で染め、施釉して焼成すると、蝋引きした以外 の部分が青く染付される。
鉄絵
白い素地に酸化鉄を含む顔料で絵付けしている。
*以上すべて「鹿児島睦 まいにち」展のための器 2023年
2. 国内外のブランドとコラボレーションしたプロダクツや作品 約100点
鹿児島は国内外のファッション、インテリア、フードなど、さまざまな領域でのコラボレーションを行いプロダクツや作品を多数生み出しています。
創業1905年の京都の帆布かばん店・一澤信三郎帆布とはオリジナルの図案を用いた帆布を2013年以降複数回にわたり制作しています。動植物を散りばめた図案は、ハンドメイドの器とは異なる画面構成で、布地への染めならではの鮮やかな色づかいが目を引きます。
フラワーベース「En Liten Vän」は、2018年から続く、スウェーデンの製陶工場グスタフスベリ社(Keramikstudion Gustavsberg)との花器のシリーズ。鹿児島が原型となる動物の造形とデザインを行い、現地で型を作り成形し、職人が一点ずつ絵付けを施し生産されています。
本展では、新作のグッズや刺繍作家の小林モー子が制作したコラボレーション作品を含む約100点のプロダクツや作品を紹介します。
3. 映像や資料で紹介する「鹿児島睦のまいにち」
鹿児島睦は、造形作家だった祖父の影響を受け、美術大学で陶芸科を専攻。卒業後はインテリアショップで勤務したのち、2002年に陶芸家として独立しました。現在は福岡市内に2つの拠点を持ち、制作を続けています。
本展の最後では、鹿児島が日々制作を続ける様子や、アトリエに飾られたアイテムなどから、制作の背景にあるものを紹介します。
僕は、朝ごはんを食べながら「今日、何する日?」と奥さんに聞くのが日課なんです。「お皿の絵付けが20枚、16時に窯出しだよ」などといってもらい、一日中、ひたすらそれをやるだけです。朝の8時頃からはじめて、12時になったらお昼を食べて、13時からまたやり出します。その日の予定を終えるまで手を動かすんですけど、普段はNetflixを流したり音楽を聴いたりしながらやりますし、蝋抜きや地塗りなどは家族も手伝ってくれます。集中してはいるけれど、 根を詰めるというのとはちょっと違って、淡々と、という感じ。陶芸の作業は夕ごはんまでに終えて、夜は机に向かって絵を描くことが多いかな。僕の毎日は、こんなです。
展覧会図録『鹿児島睦 まいにち』のインタビューより
4. 鹿児島睦の器と作家・梨木香歩の文で生まれた新作絵本『蛇の棲む水たまり』
「馬は群れを出て 森に入り
その森を出て 次の森に入る手前で
蛇の棲む 水たまりを見つけた」
作家の梨木香歩が、鹿児島睦の器を見て物語を書き下ろし、1冊の絵本が生まれました。豊かな草花が生茂る森に暮らす蛇、馬、猫、トリケラトプスなどの生き物。鹿児島が作る器に息づく生命が動き出し、ひとつの物語に向かいます。物語を受け取った鹿児島睦は、何度も読んで反芻し、ラストシーンに新しい一枚を制作しました。
展覧会では、物語の中に分け入るように言葉と器を展示し、新しい鑑賞体験を提案します。
2023年10月7日発売
発行:ブルーシープ
定価:税込2,200円(本体2,000円+10%)
文:梨木香歩
器:鹿児島睦
ブックデザイン:サイトヲヒデユキ
仕様:A5変型、68ページ、上製
5. PLAY! の壁画
大阪の子ども園・和光園の壁画など、鹿児島はアクリル絵の具やペンを用いた壁画制作も行っています。本展ではPLAY! MUSEUMのエントランスエリアに壁画を制作予定です。
*公開制作の予定はありません
6. 「まいにち」を豊かにするオリジナルグッズ、PLAY! ならではのカフェメニューも
アパレル、ステーショナリー、雑貨、フードなど、「まいにち」を豊かにするオリジナルグッズを多数用意します。絵柄の多くは本展描き下ろし。鹿児島が推薦した作り手を含め、丁寧な手仕事や伝統工芸とのコラボレーションが実現しました。和紙照明のランプ、トレーナー、グラスなど、PLAY! から販売となるアイテムも。さらにPLAY! CAFEでは鹿児島の世界観を表現した展覧会限定のカフェメニューが登場します。一部メニューは描きおろしの絵柄を使ったランチョンマット付き。
展覧会図録『鹿児島睦 まいにち』
2023年6月30日発行
発行:ブルーシープ
デザイン:白い立体
定価:(税込)2,420円、A4変形、並製、176ページ
6月30日より市立伊丹ミュージアムで先行発売、7月中旬から全国書店で販売
本展によせて、鹿児島睦からコメント
様々なアルバイトやサラリーマン生活を経験しましたが、作陶やデザインも私にとってはどれも同じ毎日の仕事でした。今も全く変わらない毎日が続いています。
鹿児島睦(かごしま・まこと)
陶芸家・アーティスト。1967年福岡県生まれ。美術大学卒業後、インテリア会社に勤務しディスプレイやマネージメントを担当。2002年より福岡市内にある自身のアトリエにて陶器やファブリック、版画などを中心に制作。日本国内のみならず、L.A.、台北、ロンドンなどで個展を開催、近年では世界中にファンが広がっている。作品制作の他、国内外のブランドへ図案の提供も行っており、陶器にとどまらずファブリックやペーパーなど様々なプロダクトを発表。また、国際的なアートプロジェクトへの参加や、空間への壁画制作など活動の幅は多岐に渡る。