「谷川俊太郎 絵本★百貨展」は、詩人の谷川俊太郎が1960年代から現在に至るまで作ってきた、200冊にも及ぶ絵本作品から約20冊を取り上げて、8名の多彩なアーティストそれぞれが映像、朗読や音、インスタレーション作品などさまざまな表現で展示する、子どもも大人も楽しめるおもしろい展覧会です。
そんな「絵本★百貨展」が注目する、絵本20冊を紹介します。
①『絵本』(写真・谷川俊太郎)的場書房 1956年(2010年復刊 澪標)
24歳のときに自費出版した写真詩集。写真と詩の関係に興味を抱き、『絵本』と題しました。17篇の詩と組み合わせた写真は自ら撮影したもので、すべて「手」をモチーフにしています。
②『まるのおうさま』(絵・粟津潔)福音館書店 1971年
お皿、シンバル、タイヤ…たくさんの丸いものたちが、自分がいかに丸いかを競います。世の中はこんなにもたくさんの「まる」で溢れています。さあ、あなたもまるをかいてみよう!
③『こっぷ』(写真・今村昌昭) 福音館書店 1972年
こっぷは水を飲むための道具だけではない!はえを捕まえたり、犯人を捕まえたり…こっぷから世界の広がりを感じる、谷川さん初の写真絵本。
④『ぴよぴよ』(絵・堀内誠一) ひかりのくに 1972年 (2009年復刊 くもん出版)
「ぴよぴよ」「ぽとんぽとん」「がしゃん!」身の回りの音を、言葉で表したらこんなに楽しい!堀内誠一さんが描くかわいらしいひよこが様々な音と出会いながら、冒険を続けていきます。
⑤『ことばあそびうた』(絵・瀬川康男) 福音館書店 1973年
リズムよく連なっていく言葉で、日本語の音のおもしろさを表現。「かっぱ かっぱらった」「いるか なんびき いるか」口に出して読むことで、思わず体も動き出してしまいます。
⑥『とき』(絵・太田大八) 福音館書店 1973年
地球誕生から、大昔、昔々、私が生まれた日、さっき、そして今。いつだかわからないところから流れはじめ、いつだかわからないところまで流れていく「とき」を感じる一冊。
⑦『もこ もこもこ』(絵・元永定正)文研出版 1977年
「しーん」。なにもないところに、突如現れた「もこ」。次第にどんどん大きくなって、ついに動き始めて「ぱく」。谷川さんの言葉と元永定正の絵がとことんナンセンスに展開する魅力的な絵本。
⑧『えをかく』(絵・長新太)新進 1973年 (1979年復刊 講談社)
谷川さんの詩を長新太さんが絵にした一冊。「まずはじめに じめんをかく」「つぎには そらをかく」。天地創造のように、白いページにどんどんとこの世のあらゆるものが現れていきます。
⑨『せんそうごっこ』(絵・三輪滋) ばるん舎 1982年(2015年復刊 いそっぷ社)
子どもたちのおもちゃの取り合いから「けんか」が始まり、「せんそう」になっていく。子どもでも、大人でも、日本人でも、誰にとっても戦争は、身近で起きてしまう可能性があるということを痛感する一冊。
⑩『なおみ』(写真・沢渡朔)福音館書店 1982年
少女と日本人形のなおみは共に時を過ごすけれど、次第に大人になっていく少女。ふたつの存在を比べることによって「時間」を表現した絵本。
⑪『うつくしい!』(写真・塚原琢哉)日本ブリタニカ 1983年
なぜ人間は、何かに対して美しいと思うのでしょうか。それは誰にもわからないけれど、美しいと思うことはとても素晴らしいこと。美術作品や自然、そして動物や毎日の暮らし、人間自体も「うつくしい」。
⑫『ままです すきです すてきです』(絵・タイガー立石)福音館書店 1986年
単語だけでなく、あえて短い文章も入れることで生まれた新しいしりとり。「ちくおんき きく くま」「のりまき きった たべよかな」タイガー立石さんの独創的な世界観でさらに引き込まれます。
⑬『おならうた』(絵・飯野和好)絵本館 2006年
子どもたちの大好きな「おなら」の絵本。「いもくって ぶ」「くりくって ぼ」「すかして へ」のリズムに乗って、飯野和好さんのインパクトのある絵を眺めるうちに……笑い転げて、ぶ!?
⑭『かないくん』(絵・松本大洋)ほぼ日 2014年
ある日、友達が亡くなった。突然の死と向き合う、残された生きる人々。しかし心の中で彼は生き続ける。松本大洋さんの静かな絵で、死と生が、前向きに繋がっていくような一冊。
⑮『これはすいへいせん』(絵・tupera tupera)金の星社 2016年
ページをめくるたびに世界が広がる〈つみあげうた〉。画面を横切る水平線をバックに、時空を超えた物語が展開します。あの最初の家はどうなる?最後までわくわくが止まりません。
⑯『へいわとせんそう』(絵・Noritake)ブロンズ新社 2019年
へいわとせんそう、みかたとてき。対照的な事柄は、実は地続きなのだと気付かされます。戦争がもたらすものについて、シンプルな言葉と絵で鋭く訴えかける一冊。
⑰『オサム』(絵・あべ弘士)童話屋 2021年
詩「ぼくのゆめ」で、「ぼく」は「いいひと」になりたいと願います。じゃあ、「いいひと」ってどんな人でしょう?それをあべ弘士さんが絵にしたのが「今日も つつましく生きている」ゴリラのオサムです。
⑱『ぼく』(絵・合田里美)岩崎書店 2022年
合田里美さんによる美しい生活の風景と、谷川さんが紡ぐ言葉。「自死」というテーマに向かい合い、およそ2年にわたって試行錯誤し生まれた一冊。
⑲『ここはおうち』(絵・junaida)ブルーシープ 2023年
junaidaさんと谷川さんが、往復書簡のように言葉と絵を交わして編んだ絵本。おうちからおでかけする「わたし」と一緒になって、読むひとも物語のずっと奥へ奥へと旅するような、そんな喜びに満ちた一冊。
⑳和田誠との絵本あれこれ
和田誠さんと谷川さんは、ふたりの絶妙なコンビネーションで、『あな』や『これはのみのぴこ』など、どの世代からも愛される数々の絵本を共に作りました。