エルマーを生み出した人

ルース・スタイルス・ガネット
ルース・スタイルス・ガネット

「エルマーのぼうけん」シリーズの作者ガネットは、1923年8月にニューヨーク州ブルックリンで生まれました。両親ともに、政治や社会問題を論じる雑誌の記者でした。ガネットは、遊びや仕事を学ぶ革新的な学校に3歳で入学しました。教師は授業をせず、学びの中心はお話し作りと積み木遊びでした。まだ字も知らないガネットがお話を語ると、先生や家族が書き取ってくれる、そんな特別な環境で育ちました。やがて読み書きができるようになると、ガネットはノートにお話を書いて過ごすようになります。

『エルマーのぼうけん』は、大学を卒業した22歳のガネットが、スキー場でアルバイトをしていたとき、退屈しのぎに書き始めた物語です。離婚した父が再婚した画家のルース・クリンスマンが挿絵を担当することになり、ガネットはエルマーとりゅうの姿や地図のイメージを描き、りゅうの動きを描くためのぬいぐるみを作り、「勇ましくて強そうなりゅうではなく、子どもが思わず助けてあげたくなるようなかわいいりゅう」と伝えました。児童文学に詳しい父、後に夫なるボーイフレンドのピーターが一緒になり、家族ぐるみで絵と言葉の関係を話し合いながら本ができあがっていきました。

「エルマーのぼうけん」展(2023年7月15日(土)―10月1日(日))では、ガネットが幼少期に語ったり書き記したりした物語、「エルマーのぼうけん」が生まれる過程を伝えるダミー本やぬいぐるみ、そのほかガネットの人柄を伝える写真や資料を日本で初めて公開します。

(協力:前沢明枝)

ルース・スタイルス・ガネット
Ruth Stiles Gannett (1923–)

ニューヨーク生まれ。幼いころからお話を考えるのが好きで、22歳のときに書きはじめた 『エルマーのぼうけん』を1948年に出版。同年、当時ニューベリー賞と並んで権威のあったニューヨーク・ヘラルド・トリビューン春の児童図書賞を受賞し、翌年にはニューベリー賞オナーブックにも選ばれた。シリーズ3巻は世界的なベストセラーとして現在も愛されつづけている。