【絵本★百貨展ミニインタビュー】minna 角田真祐子さん、長谷川哲士さん(アートディレクター・デザイナー)

「谷川さんは、変化する自分をたのしんでいて、絵本ごとにチャレンジしていると感じました」

『おならうた』(絵・飯野和好 絵本館 2006)、『オサム』(絵・あべ弘士 童話屋 2021、『これはすいへいせん』(絵・tupera tupera金の星社 2016)、『ここはおうち』(絵・junaida ブルーシープ 2023)、『ままです すきです すてきです』(絵・タイガー立石 福音館書店 1986)の5冊の原画展示と、『ぴよぴよ』(絵・堀内誠一 ひかりのくに 1972/2009復刊 くもん出版)の展示を手がけた、minnaの角田さん、長谷川さんに話を聞きました。

取材・執筆:天田泉
会場撮影:高橋マナミ
ポートレート撮影:高見知香

―『おならうた』の原画を展示した「おならドーム」が、おもしろいですね。

長谷川 絵本の最後におならをバンっと描いた場面が着想となりました。このおならの中に入ったらどれだけくさいだろうと思って(笑)、それをドームのモチーフにしたんです。

角田 くすっと笑いたくなってしまう絵本の感じを、より体感できるような展示にしたいというふうに考えました。少し屈むような姿勢で原画をのぞいていると、真ん中のスピーカーから「ボッ」って音がして、まるで自分がおならをしているように見えるんですよ(笑)。

まるで自分がおならをしてる…?

―6冊の絵本を読み込んだのですか?

角田 息子が音読の宿題で谷川さんの詩を読むのを聞いたり、娘の寝かしつけには担当した6冊の絵本を読み聞かせるような環境で日々構想していました。自分のために読むのとは違って、詩を声に発して、子どもに聞かせるということを毎日のようにやるなかで、「ああ、子どもの反応ってこうなんだ」と感じたり。そういう意味で、今回の展示は、等身大というところもポイントにして、素直に考えました。

―お子さんがとくに気に入った絵本は?

角田 娘がいちばん好きなのが、しりとり絵本『ままです すきです すてきです』。子どもは意味とか難しいことを求めずに素直に楽しめるからなのかなと。しりとりとしてもハチャメチャだし、タイガー立石さんの絵もハチャメチャ。でも、ちゃんとつながってる。そこに不思議な魅力がある絵本ですよね。

長谷川 絵にすごい強烈な色の背景を入れて展示をしているんですけど、ハチャメチャなのを理解しようとすると無理なので、おかしいなっていうのをそのまま表現しました。説明はつかないけど、突然、扉が現れるとか、絵本から感じたままのおかしい状態を空間に落とし込みました。

―谷川さんついては、どう思いましたか?

長谷川 今まで、神というかレジェンド的な印象が強すぎて。すごいというのは、今も変わらないですけれど、さらにその先にいろんなことに対して身近な視点をもっていると思います。おならをたのしむ子どもだったり、ひよこの視点になってみたり。

角田 子どもだったり、物だったり、いろんなものの視点に合わせて、物事をことばに紡いでいくことができる方なんだろうという印象です。

長谷川 しかもひとつ一つ見ると、全然別人格というか。それぞれに対して向き合い方も変わるし、いろんなものに対して好奇心をもって素直に向き合える方なんだなという。上から目線ではないし、常にいろんなところにフラットにいけるんだな、と。それがレジェンドたる理由だと思います。

角田 変化している自分をたのしまれているような、絵本ごとにチャレンジされているなというのはすごく感じました。たとえば『ぴよぴよ』は、オノマトペだけでつくった絵本ですし。

―谷川さんだから、ふたりもおもしろい提案ができたのでしょうか?

角田 そうですね、絵本から感じるワクワクに乗っかろうみたいな感じで。それを来てくれた人たちが、よりたのしんでもらえるようにするには? というとこから考えました。すごいのびのびとやらせてもらって、たのしい空間にまとまったかなと思っています。

―3年前にPLAY! のこけらおとし、「tupera tuperaのかおてん.」を担当して以来ですね。PLAY! に戻ってきた感想は?

角田 自然と「ことばと絵」をたのしめる空間になっている印象を受けました。

長谷川 空間の使われ方がすごく育っていて、いろんなものを受け止めてくれる場所になっていると感じました。すごく展示しやすかったですね。

minna 長谷川 哲士(はせがわ・さとし)、角田 真祐子(つのだ・まゆこ)

アートディレクター、デザイナー。2009年、角田真祐子と長谷川哲士によってminna設立。デザインをみんなの力にすることを目指し、ハッピーなデザインでみんなをつなぐデザインチーム。「想いを共有し、最適な手段で魅力的に可視化し、伝達する」一連の流れをデザインと考え、グラフィックやプロダクトなどの領域や分野に捉われず活動をしている。グッドデザイン賞、日本パッケージデザイン大賞金賞、SDA賞優秀賞、キッズデザイン賞、TOPAWARDS ASIAなど受賞。武蔵野美術大学非常勤講師。

TOPICS

「谷川俊太郎 絵本★百貨展」関連企画/2023年5月18日(木)−6月18日(日) OPEN:木・金・土・日の12:00−17:00
子どもから大人まで誰もが楽しめるおもしろい展覧会
谷川俊太郎の、絵と⾔葉の豊かな響きあいを味わう
「谷川さんが、気持ちいいことばを追求した『ことばあそびうた』を、体感する展示に」
2023年6月17日(土)・18日(日)、7月1日(土)・2日(日)10:00-18:00/「谷川俊太郎 絵本★百貨展」関連企画
「谷川さんと粟津さんが絵本のなかでやろうとした、雰囲気をアニメーションに」