PLAY! MUSEUMで開催中の企画展示「谷川俊太郎 絵本★百貨展」。
展覧会を見たみなさんから、感想が届きました。
コメントは随時増えていく予定です。お楽しみに!
伊藤紺さん(歌人)
見ては口にしたくなり、口にするとうきうきして、もっともっと口にしたくなる。ことばのいちばん最初のよろこびにあふれた展示でした。
「すきのあいうえお」をじっと眺めていると、つい単語を口にしている。名前があること、名前を知ること、名前を呼ぶこと。そこにずっとあるうれしさ。
『もこ もこもこ』(絵・元永定正 文研出版 1977年)の映像作品も本当に楽しくて、家に帰ってからもずっと「もこもこもこ」「しーん」を独自の動きで繰り返しています(大人なのに…)。幼い頃、同じことを飽きもせず繰り返してそのたびうれしかった感覚が蘇るように、何度目の「もこ」も新鮮にうれしい。水の味や土の匂い、生まれたての葉っぱの緑とか、そういうよろこびに近いのだと思います。谷川さんの絵本を読み聞かせしてもらって大きくなって、またこうしてこの世界に夢中になれること。やっぱり我らが谷川俊太郎さん。会場で谷川さんの声をたくさん浴びられるのもうれしかったです。どの作品も工夫に満ちていて、『とき』(絵・太田大八 福音館書店 1973年)の映像も本当によかったなあ…。昨日からずっとご機嫌です。図録やグッズも最高で、子どもがいたら子どもを連れてもういちど行きたい!
中江有里さん(俳優・作家・歌手)
言葉は文字からできている。言葉を文字以外に表すのはちょっとむずかしい。
でも言葉が画と合わさり、絵本という形になったら話は別。
絵本は読むものでもあるけど、見るものでもある。
谷川俊太郎さんは多くの絵本を手掛けられていて、誰もが一度は手にしているんじゃないだろうか。
わたしの2歳の姪っ子も絵本が大好き。小学四年生の甥っ子にも小さなころ、絵本を読み聞かせた。その二人を伴って「谷川俊太郎 絵本★百貨展」を訪ねた。
逸る気持ちが抑えきれない甥っ子。入口の床には丸が連なって描かれている。これは私が子供の頃、遊んだ丸だ!甥っ子はすぐに「ケンケンバ」をして遊びだす。妹も兄の後を追いかけて声をあげて楽しそう(ちなみに館内を走ってはいけない)。
ちょっと早めの足取りで中へ。普段は動き回る甥っ子が足を止めてじっくりと見ていたのは、沢渡朔さんの写真に谷川さんの言葉がついた「なおみ」。絵本を手に取って読めるコーナーでは、発泡スチロール製の椅子に座って甥っ子、姪っ子はそれぞれ絵本を選んで、読んでいた。
わたしが印象に残ったのは、谷川さんの朗読と画の両方を味わえるコーナー。
靴を脱ぎ、大きなテント風の空間に入る。クッションにもたれかかると、スクリーンが視界いっぱいにひろがる。映像と谷川さんの声。擬音だけの朗読が面白く、心地よい。
絵本は読むもの。そして見るもの。もうひとつ、感じるものだと思った。世代を超えてそれぞれが楽しめる。
絵本との出合い、再会がここにはあった。
「谷川俊太郎 絵本★百貨展」会場写真(撮影:高橋マナミ) 「谷川俊太郎 絵本★百貨展」会場写真(撮影:高橋マナミ)
文月悠光さん(詩人)
「ここは、えほんからとびだした ふしぎなばしょ」
展示室入り口に掲げられたその言葉通り、自分の中のプリミティブな感覚、好奇心を刺激される展示でした。まずは「かっぱ」で有名な『ことばあそびうた』のリズムを、「ケンケンパ」の動作をしながら体感。頭ではなく、身体で言葉を味わえる工夫が楽しい。
『えをかく』の展示も印象深かったです。長新太さんの絵が絵巻のように会場の壁面を連なる中、谷川俊太郎さんの朗読に歩調を合わせ、ゆっくりと歩きます。私が特に好きなのは、海の生き物たちが大集合する部分です。
展示の締めくくりである『もこ もこもこ』の部屋は圧巻でした。元永定正さんの絵を元にした鮮やかな映像(岡本香音さん制作)と、谷川さんの声が空間の中に満ちています。
これまで谷川さんの詩の朗読は何度かお聞きしていましたが、絵本の朗読は初めて。驚いたのは、絵本を読まれるときの谷川さんは一際、無邪気さと熱いエネルギーに溢れていること(しかも今年3月に録音したものとのこと!)。
スケールの大きな映像に包まれて、まるで世界の始まりと終わりに立ち会ったかのよう。しかし、作品を支えるのはあくまでもナンセンス。ほっと息をついて、余計な力を手放す時間でした。
絵本に映像的な表現の可能性を見出した谷川さん。谷川さんにとって、絵本は言葉と絵による実験場なのでしょう。
そんな谷川さんの絵本の世界を、あなたもぜひ体験してみてください。
「谷川俊太郎 絵本★百貨展」会場写真(撮影:高橋マナミ) 「谷川俊太郎 絵本★百貨展」会場写真(撮影:高橋マナミ)